Categories: 名店会議

ポケットコンシェルジュの“名店会議” 第2回 「予約困難店 YES or NOを考察する」

「名店会議」とは、レストランに関するさまざまな事柄に対して、私たちが普段から何気なく話している会話をコンテンツにしたものです。毎回、誰かの投げかけに対して、語り合います。

※このブログは、社内のオンラインランチミーティングが開催された際の会話をまとめています。

SNS時代を象徴する、レストラン予約の現状

N.S. 「名店」を辞書で引くと「有名な店」って出てくる。辞書通りに解釈するのであれば、いわゆる名店と呼ばれる店は、予約困難店、予約困難ではないけど名店、隠れた名店に分かれると思うけど、その違いって何だろう?

M.O.  隠れた名店であれば、料理がおいしくていい店ではあるけど、SNSやグルメガイドなどで認知されていない、といった感じだと思います。

N.S.  一つはメディアの露出の違いが挙げられそうですね。SNSやグルメガイドのほかに、東西で有名なグルメ雑誌とか大手グルメサイトのブランディングとか。ただ、メディアに載ったとしても、予約困難になる店とそうでない店ってあるような気がするんだけど、予約困難店って、なんで予約困難になるんだろう?

M.O.  お店の予約受付が、来店時に先の予約も取るタイプだと、お客さんが次回予約をしていくので、新規の予約が取りづらくなると思います。それに加えて、有名店出身というのも、理由の一つですね。

N.S.  M.O.さん、どうですか?

M.O.  予約困難店は、最近のお店と昔から営業しているお店のどちらもあると思いますが、隠れた名店であれば、昔から続いているお店が多い気がします。長く営業していてファンも多く、著名人がお忍びで行く店というイメージです。また予約困難店は、戦略的に短期間でつくるケースもあると思いますが、それ以外で名店と呼ばれるお店は時間をかけないとできないと思います。

戦略的に短期間で予約困難店になるケースとしては、お店のプレオープンのときに口コミサイト常連のトップブロガーやインスタグラマー等の影響力の高い人を招待して、その方々がSNSなどに投稿することで、それぞれのフォロワーがチェックするという流れが一例としてあると思います。

あと予約困難店の特徴として、お客さん側の需要に対して、供給できる席数が少ないことも理由の一つで、その状況下で、M.O.さんが言っていたみたいに、一度来店したお客さんが次回予約を取ることで、新規のお客さんが予約を取りづらくなっていくのだと思います。

N.S.  名店だけど幸いにも予約がとれるお店には、どのような特徴がありますか?

M.O.  客層が、SNSで店舗を知り来店するお客様よりも、常連の方の紹介で来店しているお客様が多い印象です。例えば、かねさかさん(銀座 鮨 かねさか 本店)は長年営業されていて、予約困難店の先駆け的な存在ですけが、お客様自身がSNS投稿よりも食に関心がある方が多いと思います。しっかりと常連さんがいながらも、新規の予約も受けていらっしゃいますね。ちなみに、かねさかさんは写真撮影NGにしています。

N.S.  写真NGね、なるほど。そうするとSNSの投稿はできないってことか。

M.O.  予約困難店で、写真撮影に制限かけているお店も出てきましたね。成生さん(てんぷら成生)は、移転してから料理の撮影はNGで、理由としては店舗が新しくなったので、来店するまで楽しみに待っていてほしいかららしいです。

K.O.  結局、インフルエンサー経由の露出が多すぎると、流行り廃りに左右されてしまう可能性もあるので、減らしていきたいという店もあるかもしれないですね。

N.S.  そうか。そうすると、写真NGにすることで客層を変えることもできそうですね。

Y.S.  SNSにあげない人が行く名店は、けっこうあると思います。ポケットコンシェルジュ掲載店は、そういったお店が多くないですか?壽修さんとか、おかもとさんとか。

N.S.  たしかに。ただ、SNSにあげるあげないって、どこで線引きされるんだろう?

Y.S.  難しいですね、その人の性分の問題かも…。一つ思ったのが、レストランの情報源が、雑誌なのか、あとSNSでもFacebookかInstagramかのどちらかによって客層や年齢層が異なると思います。Facebookは年齢層が比較的上の方が多い印象で、自分のコミュニティの中での情報のやりとりをする。Instagramだと、インフルエンサーをフォローすることやハッシュダグの検索からレストランを探すといった利用方法が多いので、比較的若い世代になる。そういった情報の取得方法で行く店が異なって、来店するお客さんの層が異なる感じですかね。

N.S.  たしかにそうですね。昔は、情報源が雑誌やテレビだったところに、SNSが入ってきた。そうすると、お客さんがどのようなメディアを閲覧しているかで客層が異なりそうですね。あとは、世界的な星付きガイドが日本上陸したのが2007年、そして、さまざまなメディアのレストランアワードがここ10年で始まってきたことで、それぞれのブランド力によって、レストランに対する印象を変えてきたって感じでしょうか。

そうしたら、K.O.さんどうですか?

K.O.  皆さんの話を聞いていて、予約困難店はインフルエンサーマーケティングがうまいと思いました。やはり、大手グルメサイトとInstagramがいま一番見られる媒体だと思うので、それらを利用しているインフルエンサーが行く店に注目が集まるなと。あとは、お店の大将が、そのような媒体が好きか嫌いかも大きいかもしれません。大将がそういった媒体を好きでない場合でも、料理のクオリティーが高くてSNS投稿NGでなければ、予約困難になる店もありますよね。

N.S.  そうですね。ちなみに、もっと人気が出てもいいのにって思う店はないですか?

まだまだある都内の実力店や地方の注目店も

M.O.  あります!料理の味はおいしいのに、立地はいいのに、とか思ったりします。やはり、どんどん宣伝してくれるお客さんが来店していないのが要因でしょうか。

N.S.  それって、どういうお店があります?

M.O.  以前、食べに行ったお店で言うと『アルヴェアーレ』が良いなと思いました。使っている食材の質も良く、ワインのリストも自分好みでした。あとはシモムラさん(エディション・コウジ シモムラ)。料理に安定感があって、食材の盛り付けに1ミリ単位の技術の高さが見られて、目でも愉しめるのが良いです。

N.S.  そうなんですね!個人的にリピートしているのは、つる見さん(中国名菜割烹 つる見)かなあ。前菜とスープが特においしくて、体にやさしい。あとは、甕出しの紹興酒がとてもおいしいので、ぜひ飲んでほしいです。

Y.S.  私は、一宮さん(但馬牛倶楽部炉釜炭焼ステーキ 一宮)ですね。質の高いお肉を炉窯を使って焼く逸品が名物で、肉のプロが焼き方の勉強に来るレベルのお店です。炉釜で焼き上げるお肉の火入れがすばらしく、絶品ステーキが食べたいときは是非訪れてほしいです。また、ステーキ以外のお料理もおいしいのでトータルでの満足度が高いと思います。

M.O.  『割烹 室井』で、普段はご主人の仕事を手伝っている息子さんが、臨時的に、奥様と一緒に切り盛りする日に食事に行ったのですが、おいしかったです。息子さんは某三つ星の和食店で修業していたこともあり、実力はあるので、限られた人にしかまだ知られていないのがもったいないなと思いました。ちなみに、息子さんは現在は西麻布の山﨑さんで働いていて、1年半後を目途に独立するみたいです。

Y.S.  大竹さん(西麻布大竹)は、西麻布という場所の中でもコストパフォーマンスが良く、サービスもいいので、この先なかなか予約が取れなくなったとしてもおかしくないと思います。大竹さんは晴山(日本料理 晴山)の山本さんと同じ『たか田八祥』で修業されていて、こちらの出身の方は良いお店が多いと感じます。

M.O.  それ、同感です!あとは寛幸さん。

N.S.  あぁ、たしかに寛幸さんの料理おいしいですよね。

M.O.  そういえば、店主には今度行きますって伝えて、まだ食事に行けてないんですけど、炎水さん(日本料理 炎水)が気になってます。

M.O.  炎水さん、おいしかったですよ!

N.S.  炎水さん、行きたいなあ。やはり、某三つ星出身の和食店は、クオリティーが高いのかな。

S.F.  私の中での名店は、まだまだ知られていない、いいお店というイメージがあります。 グルメサイトやSNSで情報が拡散されている中で、人気店とされているのは大手口コミサイトの点数上位店舗が多いので、点数が低く口コミが少なければ埋もれている状態だと思います。

そんな中で、もっと人気が出ても良いと思うレストランは、福岡県西中洲にあるレストラン アレナさん。有馬シェフはパリの二つ星、ブルゴーニュの三つ星レストランで修業されているのですが、料理がとても繊細で、美術館に来たかのような美しいお料理が特徴です。また、広島県にあるレルミタさんもとてもすばらしかったです。こちらのオーナーシェフもヨーロッパを14年も渡り歩き修業されたそうで、お話も面白く、料理もとても楽しませてくれるものばかりでした。来店される方によって出す料理をアレンジしているそうなので、そこも面白いところですね。

N.S  たしかに、ここ数年で地方のレストランの注目度も上がっていますよね。

S.F.  あとは、既に有名店ではありますが 同じく広島県のAKAIさん。RED U-35のグランプリシェフでもあり、目の前で料理されるライブ感も楽しいですが、お料理すべてその場でしか味わえない見事な完成度で、寝る間も惜しまず仕込まれているシェフのこだわりが凄いので、また再訪したいお店です。ほかには、山口県下関で国の登録有形文化財にも指定されている建物を店舗にして、魅力あふれるイノベーティブな料理を提供をしているレストラン高津さん(Restaurant Takatsu)。高津さんは、一度お会いすれば忘れられない存在になるような太陽のように明るくて心地の良い方です。外観、内観、飾っているお花や器など、すべてにセンスが溢れていて、知る人ぞ知る名店だと思います。

N.S  行きたいレストランが増えました(笑)。今日もいろいろな話ができて楽しかった、そろそろ時間ですね。お疲れ様です!

全員 お疲れ様です!

【構成】白石直久

【イラスト】佐藤良江

ポケットコンシェルジュ

Share
Published by
ポケットコンシェルジュ

Recent Posts